会長挨拶・役員一覧

会長挨拶

会長 佐々木正利みなさま、こんにちは。日本声楽発声学会のホームページにようこそ!

2023年6月4日に開催された第59回総会におきまして、会長に選出されました佐々木正利と申します。歴代の会長が、会員のみなさまと共に歩み、築き上げてこられた歴史の重みに、果たして拝命してもいいものか、たじろぎ迷う日々が続きました。しかしながら、前会長の川上勝功先生をはじめ、周囲のみなさまの柔らかな励ましをいただき、学会のこれまでの軌跡を辿りつつ受け継ぎ、次期の新たな展開の準備期間として、この3年の任期を務めることが私の責務と覚悟を決めたところです。私は歴代の会長のように統率力は強くありませんので、みなさまの意見をよく聞いて私なりの運営方針を打ち出していきたいと思います。私は72歳になりますが、この年まで物事に動じず人に尽くす「自靖自献」を信条として、東北人特有の粘りを持って事に当たって参りましたので、みなさまのお力添えをいただき何とか学会に貢献できるよう努力する所存です。何とぞよろしくお願い申し上げます。

本学会は、昭和39年(1964年)10月に城多又兵衛先生(初代理事長)と、音声生理学がご専門の須永義雄博士の発意に基づき、その後、柴田睦陸先生も発起人のお一人に加わり発足いたしました。発足当初は『発声指導法研究会』と銘打ち、「衆知を集め、時間をかけて鋭意研究を進める」との設立趣意書を掲げておりました。その後、昭和46年(1971年)度の総会に於いて『日本声楽発声学会』と改称され今日に至っております。詰まるところ、来年は設立60周年の記念の年を迎える、息の長い活発な学会、となるところでありましたが・・・。

私たちは2011年に東日本大震災という未曾有の大災害に見舞われ、その復興に懸命に努力しようやく震災前の日常が戻りつつある矢先に、思いもよらず新型コロナウイルスによるパンデミックに振り回され、さらには人々の生活を破壊し、命も安全も国際秩序も平和も脅かすようなロシアによるウクライナ侵略が勃発、いつになったら安穏な日常が戻ってくるのか、心落ち着いた文化活動を営める状況にはありませんでした。特にも、コロナ禍は私たちに大打撃を与え、例会や研修会も2年余にわたって中止を余儀なくされ、やっとのことでオンライン配信に漕ぎ着けられましたが、それでも学会活動の低迷を回避することはできなかったのです。

しかし同時に、このパンデミックは私たちに新しい視座で活動を見直すチャンスを与えてくれました。世界が翻弄される日々が続き、社会全体が「ニューノーマル」な変革を模索していく中にあって、ポストコロナ社会で必然化する個の変容と社会の変容を見据え、私たちの探究課題である「声楽発声研究・実践」においても、これまでの枠組みの再構築が求められているといってよいかと思います。今、新しく選任されました理事のみなさんによって、学会活動理念、倫理綱領等の見直しが図られ、次世代へ向けて学会が発信すべきこと、学会に求められること等を再構築しようとしています。最前に「次期の新たな展開の準備期間として、この3年の任期を務めることが私の責務と覚悟を決めた」と認めましたのはこのことを指しています。

本学会員は、大学等の研究機関の研究者やそのOB、音声医学に携わる医師や学者、小・中・高等学校等の現職教員、声楽家、脳科学者、合唱指導者、音楽教育関係者、舞台人、アナウンサー、民俗芸能及び邦楽関係者等々、実に多岐にわたる分野の方々で構成されています。ですから、それぞれのアプローチも、演奏パフォーマンス、音声医学、教育実践、合唱指導、発声指導、学術研究等多様で、幅広いジャンルに亘っています。これらの活動が評価され、日本学術会議協力学術研究団体にも登録されています。

本学会の主な活動としては、毎年5月、及び11月に主に東京藝大で開催される例会と8月に開催される夏季研修会(定期演奏会「歌の集い」を含む)、年1回の機関誌『声楽発声研究』、及び年2回の情報交換誌「学会通信」の発行があります。加えて今後は、コロナ禍で停滞しておりました「声楽発声用語集」の再編集や国際声楽指導者会議への積極的な参加、その他「日本音声言語医学会」等々、他学会との交流、共同研究等にも力を注いで参りたいと思います。

私は声楽家として長年活動を続けて参りましたが、一度たりとも自分の発声は正しいとか、また楽に歌えたなどということはなく、とても苦労して何とか人前で様になるような歌が歌えてきたかなと思っています。自分の発声が全然良くないというのは自分が一番わかっていたつもりでしたが、不思議なことに周りの人たちは私を指して、佐々木は発声が良いから、と仰るのです。その中には有識者や一流の声楽家、プロの発声指導者もいましたので、私は内心、そのような先達を信用できないでおりました。私がこの学会へ入ったのも、自分の悪い発声はどこが悪いのか、原因は何なのか、そうしたことを顕にされて、あわよくばもっと楽に歌いたい、もっと良い歌を歌いたいと思ったからに他なりません。そうして入会してみたなら、同じような悩みを持っている人の何と多いことか。理論だけでもダメ、経験則だけでもダメ、両方の側面から問題解決へアプローチすることがいかに大切かをこの学会活動で学びました。

今更言うまでもなく、「音楽」とりわけ「歌」は人類にとってなくてはならない実に多様で豊かな文化であり、「声」は有史以前より感情を伝える絶対的なコミュニケーションツールでした。歌や声に関する教育もまた、未来に向けてこれからの世界を築く上で最も基盤となる営みといってよいでしょう。音楽は万人に与えられたものであり、嬉しいときにも、落ちこんだときにも、ちょっと退屈なときにも、昔からの友人のように人生を豊かにしてくれました。人間に対して興味を持つならば、人間についての実証的な研究を行いたいと思うことは極めて自然なことであり、その研究の内容に音楽が含まれることもまた自然な流れでしょう。このようなわけで、さまざまな分野において教育を受け経験を積んだ方々が、本学会に集まっていらっしゃるものと考えています。

本学会は、限られた小さな分野を扱っているように見えるかもしれませんが、先に掲げた研究者、学生、音楽関係者、科学者の交流の場として外にはない貴重なものであることは言を俟ちません。会員のみなさまには、互いに励ましあい、情報交換、討論、共同研究などを通じて、新人からベテランまで経験を問わない会員同士の交流の場として、本学会をぜひご活用いただきたいと願っています。そして、真剣勝負の研究を通じての協力の精神を涵養し、人を育てることによって自らも育つという場を実現してくださることを切望しております。

日本声楽発声学会は、凡そ声楽・発声に関する多岐にわたる諸課題を解明、研究、情報交換する学会です。学会には、その活動が社会の負託に応えるものになっているかを問い、振り返り、すべての会員にとっての最善をめざす責任があると思っています。会員お一人おひとりがその多様な立場での研究や実践を展開してくださること、みなさまの自己実現を互いに支え合う活動基盤を整えていくことが、学会の目指す自己表現になることを確信しつつ、会長のあいさつといたします。

みなさまのご入会を心よりお待ちいたしております。

役 員 ・ 名 誉 会 員  名 簿

2023年(令和5年)年度

[ 役 職 ]
〔氏名〕
〔所属〕
 
特別顧問
堀内 久美雄
株式会社音楽之友社 代表取締役社長
顧問
永井 和子
大阪音楽大学名誉教授・声楽家
 
山田 実
桜美林大学名誉教授・学芸博士・声楽家
 
川上 勝功
声楽家・合唱指揮者・発声研究家・元日本大学芸術学部講師
名誉会員
三林 輝夫
東京藝術大学名誉教授・声楽家
 
高橋 大海
東京藝術大学名誉教授・声楽家
相談役
飯田 忠文
元信州大学教授・声楽家
 
川村 英司
日本フーゴ―・ヴォルフ協会理事長・声楽家
 
佐藤 心乃介
元江東区中学校長・声楽家
 
清水 喜承
学習院名誉教授・声楽家
 
淡野 弓子
声楽家・合唱指揮者
会長
佐々木 正利
岩手大学名誉教授・声楽家・指揮者
副会長
池田 京子
信州大学名誉教授・椙山女学園大学特命教授・声楽家
副会長兼事務局長
齊藤 祐
鹿児島大学名誉教授・声楽家・合唱指揮者
理事兼事務局次長
森井 佳子
国際関連コーディネーター(英語講師)・声楽家
理事兼エグゼクティヴ・アドヴァイザー
 
竹田 数章
仙川耳鼻咽喉科医院院長・桐朋学園音楽大学・洗足学園音楽大学臨床音声学講師
理事
入川 めぐみ
Klavier Platz 主宰・ピアニスト
 
上杉 清仁
昭和音楽大学講師・声楽家
 
梅村 憲子
福井大学特命教授・声楽家
 
岡﨑 順子
岡山県立大学名誉教授・声楽家
 
小森 輝彦
東京音楽大学教授・声楽家
 
三枝 英人
東京女子医科大学八千代医療センター耳鼻咽喉科科長
 
 
・東京藝術大学音声生理学講師
 
佐橋 美起
武蔵野音楽大学教授・声楽家
 
鈴木 慎一朗
鳥取大学教授・博士(学校教育学)
 
田中 昌司
上智大学教授(音楽脳科学)・工学博士
 
西浦 美佐子
西浦耳鼻咽喉科院長・沖縄県立芸術大学音声生理学講師
 
吉田 浩之
東京藝術大学教授・声楽家
 
渡辺 修身
山形大学教授・指揮者
監事
移川 澄也
声楽家・ヴォイストレーナー
 
山本 富美
都留文科大学講師・声楽家
事務局
佐々木 徹
154-0002 世田谷区下馬3-14-4
 
 
Tel/Fax 03-6804-0626